一般社団法人 熊本県木材協会連合会
1.実施概要
【団体概要】
当連合会は、県内14の木材協会と熊本県木材市場連合会で構成され、熊本県内の木材業者、製材業者及び木材関連業者の資質の向上に努めるとともに、木材の知識の普及・啓発、生産性の向上のための技術や日本農林規格の普及・推進を図り、木材業及び製材業並びにその関連諸産業の動向に関する調査研究を行うなど、木材業界の健全な発展と振興に寄与することを目的としている。会員の資質と見識の向上を図るための講習会等、木材生産技術の向上、木材利活用・木材流通の合理化、木製材業等に関する調査研究、その他目的を達成するために必要な事業を行いながら関連業界との連携を強化し、木材分野における地域貢献に努めている。【事業の目的】
改正建築基準法・改正建築物省エネ法等の施行は木材需要及び木材流通構造へ影響が出ることが予測される。具体的には、4号特例の縮小により品質、規格が確かで基準強度が明確なJAS構造材の利用が求められ、さらにJAS構造材の供給ニーズ、供給体制の構築が高まると考えられる。当会は、地域の製材工場等が連携し、新たにJAS製材生産・格付に取組むことを支援するほか、県内の製材JAS認証工場24工場(うち機械等級区分取得は5工場)と情報共有やJAS製材横架材スパン表の検証及びJAS機械等級材による接合金物実験・検証し、JAS製材サプライチェーン構築事業により、県内での品質の確かなJAS製材及び機械等級区分材の格付量と取扱量の増加を目指す。
これらの事業に取組むことでJAS製材の生産量アップと建築業界が求める品質の確かなJAS製材の需要拡大を図る。
1)新たなJAS製材生産販売体制の構築
肥後木材株式会社(木材市場)が令和6年度施設整備を行い、令和7年度中の機械等級区分認証を目指している。肥後木材㈱は県内の有数の木材市場であり、JAS認証取得が難しい小規模製材工場や機械等級区分機や乾燥機を所有していない工場(5社+α)から荒材を仕入れ当該工場において、乾燥→表面仕上(モルダー)→機械等級区分装置にて格付をおこないJAS製材生産量を増やす計画である。このような中で、当会は、JAS製材サプライチェーン構築事業を活用し、肥後木材㈱を中心としたJAS製材の確実な生産を図るため、関係者に対し、人工乾燥処理技術、日本農林規格、JAS製材生産、品質管理、流通に至るまでのJAS製品生産に係る知識、技術の研修を行うほか、県内複数の製材工場及び出荷販売先のサプライチェーン構築の支援をおこなった。
①JAS製材サプライチェーン構築事業セミナーに係る研修会
日 時:令和6年11月21日 会場:肥後木材本社 会議室内 容:「木材の基礎知識」「人工乾燥処理のポイント」「製材のJAS概要と制度」
日 時:令和6年11月22日 会場:人吉球磨木材加工㈿ 肥後木材人吉支店
内 容:実地研修「人工乾燥の技術と木材強度」「製材のJAS検査・技術的基準」
講 師:熊本県林業研究・研修センター シニアアシスタント 池田元吉
(一社)熊本県木材協会連合会 総務課長 水間信介
参加者:肥後木材連携企業関係者 12名

②JAS製材サプライチェーン構築事業JAS制度と人工乾燥処理に関する基礎知識及び技術研修
日 時:令和6年12月16日 会場:肥後木材本社 会議室内 容:「JAS制度の概要」
日 時:令和6年12月17日 会場:肥後木材本社
内 容:「製材のJAS認証取得のすすめ」「JAS認証工場意見交換(現状と課題)」「JAS製品等の見方実習」
講 師:(一社)全国木材検査・研究協会 専務理事 小澤眞虎人 熊本県林業研究・研修センター シニアアシスタント 池田元吉
参加者:肥後木材連携企業関係者16名 JAS認証工場関係者16名

③新たなJAS製材販売体制の構築 JAS製材(機械等級区分)の取引予定先等及び利用促進に伴う、出荷販売に向けた市場調査及び情報収集 (長崎県)
日 時:令和7年1月15日~17日内 容:JAS機械等級区分材を活用した木造4階建て「睦モクヨンビル」視察及び
建築士との意見・情報交換、長崎県内プレカット工場へのJAS構造材利用調査。

2)JAS工場の生産力アップと設計者支援のためのJAS製材横架材スパン表作成・公表
熊本県の製材JAS認証工場格付け実績(令和5年度)は構造用製材(機械等級含む)約22,000㎥(人乾)、機械等級区分構造用製材約6,000㎥の格付量である。全国的にみると格付量は多いが、県内の製材量からすると、更なるJAS格付を増やすことが求められる。そこで、機械等級区分構造用製材の取扱量を増やすため、熊本県内のプレカット工場においてJAS製材の利用状況や構造材への要望調査、JAS認証工場に対するセミナー開催や課題整理のための意見交換をおこなった。
また、JAS製材利用を促すためJAS製材による横架材スパン表(手引)の検証及びプレカット工場や、熊本県建築士事務所協会会員へのJAS構造材横架材利用セミナーを開催しJAS製材利用の拡大に努めた。
3)JAS機械等級材を市販接合金物で接合した接合部の性能評価
木造の住宅や非住宅建築で接合金物の使用事例が増えているが、使用材料の多くは集成材とみられる。製材利用が少ないのはなぜか。一因に製材を用いた接合部の評価情報の少なさが考えられ、製材を用いた評価情報の蓄積が必要と考えた。そこで、JAS機械等級区分材(スギ材)を使い、接合部の引張・せん断の実大試験を熊本県林業研究・研修センターと球磨プレカット(株)および当会との連携で行った。試験結果を関係者及びプレカット工場等へ提供し、JAS製材利用推進につなげる。①JAS製材サプライチェーン構築事業セミナー
日 時:令和7年1月29日 内 容:「JAS認証工場生産力向上及びJASスギ横架材スパンの検証」、「JASスギ機械等級材による接合金物実証検証」 会 場:ホテル熊本テルサ 講 師:熊本県林業研究・研修センター シニアアシスタント 池田元吉 参加者:木材関係者28名 設計建築関係者12名、行政関係15名 |
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2.事業実施により得られた効果
1)新たなJAS製材生産販売体制の構築
肥後木材㈱(木材市場)が、JAS機械等級区分の認証を目指し、令和7年度末までに14,000㎥のJAS構造材生産を目標に施設整備を進めている。また、同時に地域の中小の製材工場と連携(協定)して荒材を仕入れ、肥後木材でJAS製品を生産する供給体制の構築を進めている。本事業による支援により①連携製材所の見当をつけることが出来た。②荒材を供給する連携製材所の技術者を対象とした、木材の基礎知識、人工乾燥処理、JAS制度・規格、生産・品質管理、流通に至るまでの座学及び技術研修を行ったことで、供給する製材工場は、品質が確かなJAS製品生産のためには、原木の仕入れから製材技術に至るまで見直しが必要であるなどの意識改革を図ることができた。③一体的な機能を備えたJAS製品生産供給体制の構築と同時に、早期の段階から新たなJAS製品(機械等級区分)生産目標に近づくための体制づくりに効果が得られた。
一方で、JAS製品の新たな需要先、住宅建設が旺盛な消費地である長崎県は、素材生産量も16万㎥と本県の1割程度であり、JAS認証工場(目視等級区分)も1社であることから、長崎県木連と当会の連携によるJAS製品流通サプライチェーン構築を念頭に、長崎県内のプレカット工場のニーズ調査、長崎県木連とのJAS製材生産流通の連携検討を行った。令和7年4月からの改正建築基準法施行により、4号特例が縮小することに対し、プレカット工場の理解と対応、JAS製品のニーズの高まり等を相対で意見交換することで、熊本県産JAS製品の新たな流通先の開拓の足掛かりを掴むことができた。このような中で、熊本市及び諫早市において、長崎県木連との意見交換において、長崎県産原木を熊本県が供給を受け、JAS製品を加工し、長崎県内プレカット工場、市場等で流通させる構築の可能性があることから、引き続き協議することとした。
さらに、JAS機械等級区分材を使用した、あらわし木造4階建て「睦モクヨンビル」の建築士は熊本、九州をはじめ全国において積極的な木造建築を推進しており、当県が進めている地域流通材(JAS製品)による木ビルや非住宅等の木造化において新たな連携を築いていくことをお互いに確認することができた。
2)JAS工場の生産力アップと設計者支援のためのJAS製材横架材スパン表作成・公表
JAS認証工場、設計者の方々への聞取りから再認識した現状は、①生産量が多いのは柱材で横架材用平角材の生産量は少ない
②横架材に利用されているスギ平角材のせいは210㎜くらいまで
③利用者が想定している横架材の曲げヤング係数はE50程度
④機械等級区分材の流通は、公共物件用など限定的である
②横架材に利用されているスギ平角材のせいは210㎜くらいまで
③利用者が想定している横架材の曲げヤング係数はE50程度
④機械等級区分材の流通は、公共物件用など限定的である
上記のような現状を受け、当初はJAS横架材スパン表にE90を追加したスパン表を作成・公表することとしていたが、JAS機械等級区分材E90への需要が望めないこと、また県内JAS認証工場の横架材生産現状から、E90製材を効率よく生産するために欠かせないヤング率が区分された丸太の供給体制がないことなどから、今年度はE90を追加したスパン表作成は見送りJAS機械等級区分材による横架材スパン表の検証をとおして、今後の増加が期待される機械等級区分材への需要に合理的に応じられる丸太供給体制の整備に向けた取組み内容を県内の丸太流通の実態を踏まえ整理することとした。 | ![]() |
3)JAS機械等級材を市販接合金物で接合した接合部の性能評価
木造建築物にスギJAS機械等級区分材が採用される機会を増やすことを目的に、これまで集成材による性能評価が多かった市販接合金物において製材どうしの接合部の評価試験を行った。使用した金物は株式会社タナカ製梁受け金物(MHシリーズ)である。試験内容は柱梁と梁梁の接合部のそれぞれに引張とせん断の2種類である。試験体数はそれぞれのタイプ毎に7体ずつ、また、部材断面寸法は105mm角と120mm角の2種類、接合金物はMH-90とMH-120とした。試験体数はタイプ毎に7体、総数は56体である。 引張試験の一部を右表に、荷重変位曲線の一例を右図に示した。このうちの①MH-90柱梁(引張)の短期基準耐力(5.04kN)はメーカーの性能表にある8.3kNより低い値であった。なお、メーカーの使用材料は、柱:構造用集成材、同一等級構成、スギ、等級E65-F255、横架材:構造用集成材、対称異等級構成(上下層ベイマツ+中層スギ)等級E105-F300であった。この短期基準耐力の差は、使用材料の違い、E50製材に散見された過乾燥による内部割れが影響していると推察された。よって、今後、内部割れがない製材による試験を行い、製材による本来の性能を確認する必要があると考える。また、流通している乾燥材に内部割れが“ない”あるいは“僅かにある”ような品質になるよう乾燥材の品質向上を図ることの重要性を再認識することとなった。引き続き乾燥技術向上のための講習会等に取組むこととしたい。 |
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3.今後の課題
1)新たなJAS製材生産販売体制の構築
令和7年3月には荒材生産、4月には本格的な乾燥材生産、JAS認証に向けた品質管理記録をおこなうが、一貫した生産状況を確認しながら、荒材工場、人工乾燥処理、品質管理等にかかる実務研修、全ての生産工程における課題の抽出を行い、その結果を各工程にフィードバックし、早い段階での生産技術・体制の確立とJAS認証取得ができるように当会としても寄り添っていく。また、JAS製品の販路開拓及びサプライチェーン構築を目指し、肥後木材㈱は、認証取得後、今回、調査を行ったプレカット工場等を対象にJAS製品サンプルを持参のうえ供給先の掘り起こしを行うこととしている。
併せて、熊本、長崎県木連が連携し、原木市場、製品市場、プレカット工場を巻き込んだJAS構造材の生産流通体制構築の実務的な検討を行っていく。
さらに、熊本県内でのJAS製品を活用した木ビルの検討、商業施設等非住宅分野でのJAS製品活用について、モクヨンビルを設計した建築士とも積極的に連携を深めながら、JAS製品の流通、活用を広げていくこととする。