ーー木材の基礎知識として、まず「製材」とは、製材のJASとは何かを教えてください。 佐藤●設計・施工の皆さまからは「JAS構造材を使いたいのだけれど、木材や、製材のJASはわかりにくい」という声をよくお聞きします。木材は、建築物に使用する際に、他の構造材料と比較して、軽いわりに強く、適度の保湿性や調湿機能などがあり、人にとって快適な材料です。特に製材品は、他の木質建材と異なり接着剤を使用して製造しておらず、無垢(むく)の木材という自然素材をそのまま生かして製造しています。 一方、製材品は、自然素材であるがゆえに、他の構造材料と比べ性質にばらつきがあるという課題も抱えています。このため、JAS規格では、製品の寸法の精度や材面の品質のほか、乾燥処理を行う場合は含水率試験、機械等級区分を行う場合は曲げ試験を行って、性能を明確化しています。JAS規格はこれらの検査方法を定めています。 |
黒田●製材は、林業との関わりがとても深い木材製品でもあります。製材工場は全国各地にあり、山に最も近いところに立地しています。一方、集成材などは大型工場が必要なので、全国でも数が限られます。 建築との関係について言えば、製材は林業と建物を結ぶ最も身近な存在です。私たちは、製材をもっと都市で使ってほしいと願っていますが、その理由は、そうした建物と林業をつなぐチェーンが失われてしまうと、日本の林業が危うくなるからです。それは単に林業の問題にとどまらず、国土保全など森林が持つ多面的機能の不安にもつながってきます。 |
ーーそうした製材の中で、これから普及が期待される「JAS構造用製材」とはどのように位置づけられる木材製品なのですか。
佐藤●JAS法令の改正が2018年4月に施行され、製材品などのこれまでのモノ(最終製品)に対する規格に加えて、製法や輸送方法、試験方法など、多様なJAS規格を設けることができるようになりました。現在、飲食料品や木質建材などで70を超える品目にJAS規格が定められています。このうち木質建材では11品目にJAS規格があり(図1)、この中に製材が含まれています。
製材のJAS規格(JAS1083)では、「構造用製材は、針葉樹を材料とするものであって、建築物の構造耐力上主要な部分に使用することを主な目的とするもの」と定義しています。
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